なぜ悪い人を弁護するのか
- 報道などで会ったこともない多くの人を自己の感情にまかせて殺害した犯人が映し出されることがあります。この様な者に弁護士はいらないとの思いはそれなりに理解できます。
しかし、この様な被告人にも弁護の機会が与えられなければならないとされています。私達弁護士が刑事事件に関与する第一の点は「適正手続の保証」という要請です。
その人が犯人だと思われていても、本当は間違いであったという場合があります。無実の罪で長期間刑務所に入れられたり、死刑の執行をされてはたまったものではありません。
いつ私たちの身にもこの様な誤った疑いが発生するとも知れないのです。
犯人に適正な刑罰が科せられなければならないという要請とともに、無実の人を誤って処罰しないということも非常に大切なことです。
そのため犯人と判定されるためには、被告人が裁判所において反論と反証の機会が十分与えられ、真実の探求が適正に行われる必要があるのです。
また、思想や信仰による差別が原因となってえん罪や弾圧が行われることがあります。大衆の誤った価値観により無実の人を処罰しないような仕組みも必要です。
我々弁護士は適正手続による刑事裁判を実践する中で、誤判をなくしていく活動をしています。
また、仮に真実、被告人が犯人だとしても犯行に至った経過については、多くの原因や経過があります。
被告人の生い立ちや育てられた環境、家族状況は重要ですし、被告人が犯罪を行った動機、事情も量刑を決めるのには大変重要な判断要素です。
物事にはそれぞれの立場により見方が異なります。弁護人としては、出来るだけ被告人に有利な情状を主張することにより適正な量刑判断を求める活動をしています。
一見、情状の余地がないと思われてる様な事件でも、被告人と何度か面談していると多くの情状事実が出てくるものです。
この様に刑事事件における弁護人の活動は弁護士の仕事の大きな役割であります。